母がいつも歌を口ずさんでいたため、物心ついてから今日まで歌と尺八を友として人生を歩んできました。 童謡、唱歌、ナポリ民謡などが好きですが、1 曲選べ、と言われれば迷わず竹久夢二の「母」を挙げます。 博士になった姿を見せることができなかった母。一般の門(かど)のところで待っている、という解釈とは異なりますが、 この曲を想うたび、あの山裾の苫屋に続く小道の曲がり角(かど)まで出て私の帰りを待ち詫びる老いた母の姿が目に浮かび、 胸が痛み涙があふれます。こんな小さな曲なのに。
・ふるさとの山のあけくれ 緑のかどに立ち濡れていつまでも 我待ちたもう 母は悲しも
・幾山河遠くさかりぬ ふるさとの緑のかどに今もなお 我待つらんか 母は遠しも