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栃木語り部の会代表 間中 一代さん

栃木語り部の会代表 間中 一代さん

2024.03.15

「語り」に救われ、「語り」をライフワークに
声の文化を発信し続けたい

「語り」に救われ、「語り」をライフワークにしている栃木語り部の会代表の間中一代 さん(64)。小中学校や公民館、高齢者施設、各地のイベントなど多様な場での語り活動は34年目を迎えた。「語りは私に多くの人との出会い、先人との出会い、昔話との出会いをくれました。これからも声の文化〝語り〟の魅力を発信し続けることで、先人の知恵の集積として語り継がれてきた昔話を次の世代にバト ンタッチしたい」。

幼い頃から祖父母や母の昔話を聴いて育った。のんびりと楽しい祖母の語り。昔話も世間話も教訓を含んだ母の語り。浅草の芝居小屋「宮戸座」で講談師としても舞台に立った祖父からは、風呂場で講談 「忠臣蔵 討ち入り」「南部坂 雪の別れ」などを身振り手振り付きで教え込まれた。間中さんのテンポ良い語り口には、祖父直伝の講談に通じるものがあるという。

昔語りとの再会は1990年。子を亡くし、教員を早期退職後に入った図書館ボランティアの会で栃木の伝説「鯰 の恩返し」を聴き、語りの魅力にとりつかれた。その後、各地で開かれる語りの会を聞き歩くうちに、語り手を志す原点となった作品に出合う。幼い娘を亡くした母親が、娘と遊んでいたイタチが歌う子守歌によって立ち直っていく物語「いたちの子守歌」。

「いつまでも下を向いていないで、次に踏み出しなさい― そんなメッセージをこの話から受け取りました。子を亡くし失意の中にいた私が立ち直るきっかけをもらった語りで、私も伝承の昔話を語り継いでいこうと心に決めました」

その後、学校・施設への出前語りをはじめ、蔵や旧家の奥座敷で箏とコラボ語り、舟の上での怪談話、昔話に着想を得た料理とのコラボなど次々と活動の場を広げていった。30年を超す語り活動の中で最も印象に残る舞台は、東日本大震災後に福島県川俣町の仮設住宅の集会所で行った語り。「元気を出してもらおうと楽しい話、面白い話ばかりを語りました。みんな笑ってくれて、ひと時でも辛いことを忘れて過ごしてもらえ幸せでした」と振り返る。

間中さんの活動について、「間中一代さんの栃木語り」(瑞木書房)の編著者で元国学院大栃木短大講師の野村敬子さんは同書の中で「活動のキーワードは語り文化が根付くことを念じる栃木郷土への愛、 そこに今在り、そこで暮らす人々への愛でした。その語りには地域おこし、人おこし・ 栃木再生の栃木人としての語り行動で拓く夢も感じさせられます」と記している。

なお間中さんが理事を務めるNPO法人全日本語りネットワーク主催の「雛語り語りと紙芝居の会 蔵の街栃木」 が、3月3日午前10時から栃木市民交流センターで開催され、栃木語り部の会からは代表の間中さんの他5人が出演 する。(既に予約満席)

 『間中一代さんの栃木語り』 野村敬子・霧林宏道編著 瑞木書房

問い合わせは間中さん ☎ 080-5424-2994 パソコン tj@cc9.ne.jp

             栃木語り部の会・雛語り実行委員

             左から、川元由美子さん 、岸千賀子さん、志鳥桂子さん、 松村よし子さん