下都賀郡長の職にあった父雄一は、足尾鉱毒事件の後始末のため、渡良瀬川下流の谷中村村民の立ち退きというきわめて困難な問題に取り組んでいました。
その立ち退き反対運動の指導者として有名な田中正造が突然官舎を訪ねて来ました。信子は目がギョロっとしたこわいおじさんに驚き、あわてて逃げようとすると、正造は「こわがらんでいい」と、オカッパ頭をなでてくれました。 父の仕事や正造の運動を見て、信子は社会問題について関心を持つようになりました。ただし、信子が深く関心を抱くようになるのは、おもに社会的な弱者、特に女性の問題についてです。
