高校生の時、物理や化学を学んでいて、「何か宇宙って保守的だなあ」とぼんやり思っていた。60年も経った今、不思議と気になりだして、今、初めて文章にしてみた。
最初は、アイザック・ニュートン(1642~1727英国)が、1687年「プリンキピア」の中で発表した、「運動の第一法則 慣性の法則」と「第三の法則 作用反作用の法則」の話だ。
慣性の法則とは「外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける」という法則である。当然と言えば当然なのだが、現実には空気抵抗や摩擦力が働き、運動している物体も何時かは静止してしまう。
地上では、生きとし生けるものが最後は死という形で終わりを迎えるように、全ての物体は静止という形の死を迎えるのだ、と高校生の時考えた。
第三法則 作用反作用の法則とは、「ある物体が別の物体に力を加えると、加えられた物体は、加えた物体に同じ大きさで反対向きの力を必ず加える」というものだ。反作用については誰でも経験している事で、壁を押せば、同じ力で押し返される。だが、何もしなければ何もされない。自然は、或いは宇宙は、悠然としていて保守的だなあ、と高校生の時思った。
次は、「ルシャトリエの原理」だ。フランスの化学者、ル・シャトリエ(1850~1936)は1884年、「化学平衡で、温度、濃度、圧力を変化させると、その変化を打ち消す方向に平衡が移動する」という原理を発表した。例えばアンモニア合成の反応式N2+3H2=2NH3+92.2kjで、圧力を上げると、左辺が4モルで、右辺が2モルなので、窮屈になり、平衡は右辺に移動する。温度を上げると、発熱反応なので熱くなりすぎるのは嫌なのか、平衡は左辺に移動する。「自然、宇宙は諍いが嫌いで、楽な方に逃げるなあ、保守的だなあ」、と高校生の時思った。
最後に「電磁誘導の法則」だ。英国の科学者マイケル・ファラデー(1791~1867))は、1831年、コイルに磁石を近づけたり遠ざけたりすると、コイル内電流(誘導電流)が流れる事を発見した。例えば、輪になったコイルの中に、磁力線を出しているN極を急に近づけると、コイルの輪内の空間は、びっくりして「何で急に入ってくんだ、この野郎」と言って、反対向きの磁力線を瞬時に出し、今度はコイル内の電子がびっくりして一定方向に逃げ出し、コイル内に電流が流れる。(電流の方向は、フランスの科学者、アンドレ・マリ・アンペール(1775~1836))の法則で(右ネジの法則)で定まっている。電流の単位アンペアはアンペールに由来する)高校生の時、「自
然、宇宙は意外と喧嘩好きだけど、何もしなければ大人しいのだから、やっぱり保守的だなあ」、と思った。
だが、60年経った今は違う。(その2に続く)