4~5年前、FM「おーラジ」の対談に誘われました。局は懐かしいロブレの4階でした。途中で歌のリクエストを求められ、唱歌「野菊」をお願いしました。私は苦労して自分を育てて下さった母を何の親孝行もせずに亡くしました。博士になったのも58歳と遅かったので、その姿を見せることもできませんでした。でも、たった1回、母のための音楽会を開いたのがこのロブレのホールだったのです。
まもなく二期会のオペラ「ドンジョバンニ」のタイトルロール(題名の主役)を務めることになる今村雅彦さんとやがて日本歌曲コンクールで優勝する斎藤京子さんが応援に来てくれました。最後のアンコール曲に母がよく歌った、寒さに負けず気高く咲く花が母の姿と重なるこの曲を選びました。母はあたりをはばからず大きな声で歌い、終わると立ち上がり、観客に向かって「敏男をよろしく」と何度も頭を下げました。
30年前、私が45歳の頃の懐かしい思い出です。