「社会の底辺に生きる人々をモチーフにした木版画や彫刻を残した鈴木賢二(1906-1987)の作品展「VALUE The 賢二2023 - 額から跳び出たケンジさん」が、栃木市万町の蔵の街市民ギャラリー(旧とちぎ蔵の街美術館)で20日から6月11日まで開かれる。主催は賢二ゆかりの人やファンらで組織する「創る会」。会を束ねる賢二の四女・解子さん(77)は「プロレタリア芸術家と称せられる賢二ですが、彼の歩みと多岐にわたる作品をなぞってみると、プロレタリアという括りだけでは捉えきれない人となりが見えてきます。展覧会では〝VALUE=大切にしたい〟をキーワードに、賢二の生涯と作品をたどりながら、その〝今日性〟を見つめていきたい」と話している。
鈴木賢二は栃木市の素封家に生まれた。東京美術学校彫塑科に入学し、プロレタリア美術運動に熱中。1923年に帰郷してからは彫刻家として活躍。戦後はメッセージ性の強い木版画を制作するほか、栃木市の郷土玩具の開発にも取り組んだ。近年は1960年代の木版画が注目を集め、高級アパレルブランドが賢二作品とコラボした衣装を発表、若者の人気を呼んだ。
同展では賢二が大切にした「民衆」「子ども」「平和」「家族」「地域」「世界」などのテーマごとに、木版画を主体にブロンズや土・木工玩具、植物スケッチなど100余点を展示。さらに1930年代後半に賢二が主導した蔵の保存運動や、映画「路傍の石」のロケ地招致活動の資料も公開される。解子さんの夫・星野進さんは「賢二は現在の景観保護やフィルムコミッションの先がけともいえる市民運動にも力を尽くしました。自分が面白いと思ったことは、すぐ行動に移す。先見性と実行力に富んだ人でした」と語る。
また賢二の母校・栃木高校の講堂では同時企画「ケンジをパフォーマンス」が、20・28日と6月4日に開かれる。
20日の「オープニングセレモニー&トークショー」は、〝賢二Tシャツ〟を着た子どもたちによる「キッズダンス」で幕開け。「賢二作品の今日性」をテーマにしたトークショーには、賢二の版画作品を衣装に取り入れたデザイナー・横山大介さん、現代アーティスト・彫刻家の大平龍一さん、東京外国語大学大学院教授で鈴木賢二研究会員の友常勉さんが出演する。午後1時半開会、入場無料。
28日は「語りと映像で綴る賢二ヒストリア」が行われる。出演は解子さんの古くからの友人でありアーティストの磯秀明さん(俳優)、茂呂久美子さん(朗読を楽しむ会代表)、須田千香良さん(チェロ)と賢二の100歳違いのひ孫・山極鈴羽さん。賢二の生涯と作品世界を17歳の鈴羽さんが旅をする。午後2時開演、入場無料。
6月4日は「ケンジを奏で舞う」。笛・三味線・箏の演奏と、賢二作品とコラボした横山さんデザインの衣装をまとったパフォーマーたちが賢二をオマージュして〝生きる輝き〟を表現する。出演は木村俊介さん(笛・三味線他)、稲葉美,和さん(箏)、安藤喜代さん(ダンス)、石川歩夢・直井陽斗さん(パフォーマンス)。午後2時開演、入場料2千円。
問い合わせは、創る会事務局(鈴木賢二作品室・如輪房) TEL.0282-22-1093