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コラム

2026.03.13

「遥か数万年後、全ての人が芸術家である社会」について〜その2〜

人類の内的進化〜1パーセント他者のために生きる〜

 人類の精神的成長進化と言っても、抽象的で理解するのも容易ではなく、実践するのは更に難しい。だが、物理学者アインシュタインの「私は信じる」の中で書かれた名言が、優れた参考指針となる。彼は、「人間は他者のために、この地上に存在している。」と断言している。冷徹な合理性の中で生きる、人類史上稀有な物理学者の言葉だから、一層心にしみる。ただ我々凡人は、100パーセント他者のために生きることは出来ない。わずか1パーセント他者のために生きようと心がけさえすれば良いのだろう。この1パーセントで、バスや列車内で、お年寄りに、恥ずかしがらず席を譲る勇気を引き出せる。正しい事をするのに、何ら躊躇する必要はない、という勇気を引き出す事が出来る。
 ただ銘記すべきは、他者のために生きるという事は、自己犠牲と同義であり、危険な落とし穴が待ち構えているという点だ。「他者のために生きる」とは突き詰めれば「他者のために死ぬ」事であり、武士道では「主君のために死ぬ」という美学がある。天皇制では、天皇のために死ぬ、全体主義国家では国家のために死ぬ、極道社会では親分のために死ぬ、家族愛に満ちた人で
あれば家族のために死ぬ等、人間は、長い人類史の中で、死を恐れながらも、この甘い美酒、美学を、我らの赤き血潮の中に培って来てしまい、苦しくも甘い陶酔の中で我らは死を甘受出来るのだ。あの大文豪三島由紀夫にしても、この美学に酔いしれ、自刃し、あたら豊穣な才能は無に帰した。故に、全的自己犠牲は、危険な蜜の味だから、21世紀初頭の我らは、1パーセントの自己犠牲から始めれば充分である。
 以上の事を銘記して、性急だが、内的進行の、ささやかな実践論に入る。
①綺麗な言葉を使おう
 我らは、豪華に見える初めての料理を味わう時、まず見た目で判断し、次に匂いをかいでから食するであろう。たが嫌な匂いがしたら、少し顔を背け、そっと皿を置く。人間も同様で、容姿は端麗でも汚い言葉を発する人であれば、心中で顔を背け、失礼の無いように退散するであろう。方言や訛りがいけないと言っているのではない。宮沢賢治の「永訣の朝」、「無声慟哭」で、妹の臨終の時、「あまゆじゅとてちてけんじや」、「おら おかないふうしてらべ」などの方言は、文学的質を高め、読者の胸を打つ。標準語だろうと方言だろうと、綺麗な優しい心のこもった言葉が人を動かすのだ。「初めに言葉ありき」、「言霊」などの宗教的意味を持ち出すまでもなく、綺麗な言葉は、聞き手、話し手の両者の心を清める働きが有ると、私は確信している。
②女性を大切に
 太古から21世紀初頭まで、効率的に殺戮する武器を開発しながら、人類は営々と戦争を繰り返して来た。更に今後幾世紀は、核兵器を凌ぐ残忍な武器を作り続けるであろう。この途方もない愚行の誘因は、男社会であるから、と言って過言ではない。今や世界中で女性重視の傾向が高まっているが、これは男性政治家の大衆迎合的ポーズではなく、人類自己救済の、人類の無意識の本能的胎動に違いない。屈強で妖艶な裸婦を描き続けた洋画家古沢岩美氏も、女神性、母性を所有する女性に救いを求めた一人である。
 男性は、女性に対する劣等感、恐怖心の裏返しとして、様々な形で女性を抑圧してきた。中国の「てん足」や東南アジアの「首長族」のように、男性は卑怯にも、「美」を前面に押し出して女性を束縛してきた。直接的には「魔女狩り」と称し、有能な女性を抹殺した男性社会の歴史がある。現代では、痩身の女性の方が美しいという風潮が醸成されているが、ルノアールの裸婦を見るまでもなく、この痩身願望風潮は人類史では例外であろう。女性の方々、用心あれ。いずれにしろ「本史」を実現するためには、政治経済文化全ての面で、指導者の半数近くが女性であらねばならない。この事が実現するまでは、男性は女性を慈しみ庇護する義務がある。
③他者を褒めよう、負の感情をコントロールしよう
 人間は褒められて成長する存在であり、感情的に非難されると、不毛の反抗をしながらも精神は萎縮する。この事を、教師、指導的立場の者、会社の上司は特に留意せねばならない。部下に非が有る時でも、理を尽くして優しく包むように諭す事が肝要である。指導する者が有能か否かは、そこで決まる。怒り、増悪、拒否などの負の感情は、心の底から湧き上がって来るので、コントロール不能という考えも有るが、私はそうは思わない。その様な時、いとおしい人や物、楽しかった記憶を想起すれば多少のコントロールは可能になる。家庭内の不和も、家族全員が愛するペットを話題にするだけで、いさかいが回避される時もある。些細な事だが、世界中で笑顔が増えれば、人類の進化には不可欠で重要な一歩に違いない。
 以下説明を付記していては紙面が足りないので、タイトルのみ表記する。
④学生、生徒、成人も好奇心を持ちどんどん勉強しよう。受験、資格取得、目的は何でも良い。人生の一部は学ぶ事なのだから。

⑤歌をうたおう、好きな曲を聴こう、踊りを踊ろう、絵を描こう、文章を書こう、本を読もう、詩を朗読しよう、趣味を持とう、楽しい運動をしよう、出された食事は作った人、食材に感謝して食べよう、良き事を思って眠りにつこう、自然に親しもう、ペットを飼い心を通わせよう、友を作ろう、友と語ろう、芸術展を観に行こう、素敵な恋をしよう、旅行に出かけよう、おしゃれをしよう、正しい事をするのに何ら躊躇することはないという勇気を持とう、表情を豊かにしよう、他者の意見を良く聞き1パーセントでも他者のためになるかどうかで判断しよう。
⑤はまるで一日一訓日めくりカレンダーだが、過去は思い出、未来は希望で、我々人類が所有できるのは現在のみなのだから、数万年後の「本史」を夢みながら、今の今、何をするかが一番重要なのだと銘記すべきである。上述の一部を実践しただけでも、我々はほんの少し進化出来る。周囲の人に優しい言葉をかけ、1%だけ他者のために生きようと努力すること、これこそが、一番遠回りのようで、21世紀初頭一番の近道なのだ。そう、「存在とは進化」なのだから。

●渡辺私塾会長  著述家  渡辺美術館館長   渡辺淑寛

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