「人類の更なる進化」
数万年、数十万年後の話なので、私の妄想、空想と、ほんの少しの天からのインスピレーションから書いている故、荒唐無稽なお伽噺の内容になる事を、切に許されたい。
200世紀近くになると、肉体が透けて見える者が出現し始める。医学的には普通の肉体であるのだが、細胞自体が透明感をもち、睡眠も数分で充分になり、人類は物質性より精神性が優位になる。精神の優位が増すにつれて、多くの者が、物をも動かす強い精神力を持つようになり、人々は言葉を発するよりも思念を交換するようになる。たとえ対面せずとも、その人の事を思うだけで意思疎通が可能になる。今で言うテレパシーの発展した能力なのかも知れない。
130世紀を過ぎても人類にとって「死」の問題は、恐ろしくも未だ未解決であった。既に宗教団体が皆無になった事もあり、「死」とは覚めない眠りであり「無」であるという思いが暗黙の了解であったのだ。だが、200世紀を過ぎる頃、遠くに居る者と思念の交換をしている時、死者と交信出来る人達が次々に現れた。時代が巡るにつれて、ほとんどの者が、他界した愛する肉親や友と交信出来るようになり、来世の存在は動かしがたい事実となった。200世紀を過ぎて初めて、人類に本来備わっていた精神能力により、「死」の問題は解決したのだ。人類にとっては、「農耕革命」、「産業革命」、「重力革命」、に次ぐ「生死革命」であり、最終革命と呼ぼれた。更に来世の賢者から、死後の世界について詳しく知ることになる。来世の賢者によると、来世は、古来から言われていたような天国や地獄が存在している世界ではなく、生と死の無限多重構造になっているとのことである。つまり、地上の死は、来世の誕生であるが、来世でも死があり、来世の死は、2次来世の誕生になる。そして3次来世の生と死、4次来世の生と死、・・・無限次来世の生と死と続き、人類は無限の進化を続けて行く。この進化は人類に限った事ではなく、動植物、鉱物など存在する物全てが進化の道を歩んでいく。そして5次来世で、人類は全ての動物と交信出来、10次来世で植物と、20次来世で鉱物と、30次来世であらゆる気体と交信可能になる。勿論、動植物、鉱物、気体にも人類とは異種の精神が有る事は言を待たない。それらの精神と人間の精神とで重なり合う部分が有る事は、ペットを愛した人にとっては、自明中の自明であろう。
また、人類の洗練された個性は一層研ぎ澄まされ、当然、全ての人が芸術家である社会に生き、まさに存在自体が、美であり純粋な喜びである世界である。
更に、来世の賢者によれば、再生、生まれ変わりは、従来の考えと異なっていて、動植物から人間に、人間から動物に再生することは無く、再生は人から人に、同種の動物から動物に再生するとの事である。この地上は、人類の進化の道では、かなり厳しい修練の地で、それ故、その逆境の中、たいまつが逆風で燃え上がるように、白波が烈風で輝くように急速に進化を達成する者も居る。来世の死は、歓喜の中で多くの者に見送られ、来来世の誕生は、喝采の中で、多くの者に出迎えを受けるのだが、21世紀初頭では、周知のごとく、死は悲嘆の中の出来事である。しかし200世紀を過ぎると、死は悲しみの出来事ではなく、慶事になったのだ。かくして「生死革命」は成就し、人々はそれを「最終革命」と呼んだが、果たして最後の革命であるのかどうかは、30万年の時を経なければ、誰にも解ろうはずがない。
もうこれ以上の推論は、私の想像の遥か彼方にあり、再度想像力と天の啓示が満ちるまで、私は密かに待たねばならない。
「結び」
200世紀を過ぎると、現世、来世を含めた哲学が支配的になる。その骨格は、人間も動植物も鉱物も存在する物全てが進化するように出来ており、それらを含む宇宙全体も進化する存在だという事。そしてその進化は、始まりも終わりも無い永久進化の旅である事。そして地上の全ての物、宇宙の全ての物は、この「永久進化論」を確信していた。20世紀末ビッグバン宇宙論が支配的であったが、今や宇宙には始まりと終わりが無い事も証明された。更に、銀河間どうしの交流も始まり、銀河を、数千含む銀河団どうしの交流にまで発展していく。そして銀河の生命体の総合意志で創られる銀河意識が存在し、同様に銀河団意識が有り、銀河団が集まった小宇宙意識が、更に、中宇宙意識、大宇宙意識と、無限に大きくなり、宇宙の果ては無い。そして素粒子の中に極小だが、宇宙があり、その極小宇宙内の生命体にとっては、この極小宇宙は、無限大に見える宇宙なのだ。つまり時間に始まりも終わりも無いように、空間も無限小から無限大で、始まりも終わりも無い。その無限宇宙の中で、人類も、全ての存在する物も、永久進化の道を歩んでいく。最後に、この全ての宇宙が、シャボン玉のように消えて無くならない限り、我ら人類は、遥か数万年後、悠久の進化の未知なる途上で、全ての人が芸術家である社会を実現している事だけは、如何なる命題より確かなのだ。 お、今、何処からともなく、宇宙のささやきが聞こえる。彼らは言う。さあれ、21世紀初頭の愛する人々よ、まだまだ前史だ。漆黒の中這ってでも生き、人にやさしく、自分にやさしく、今居る場で、様々な事を学びに学び、笑顔を浮かべ、不可避の「本史」を夢見るように夢みよ。そう、逆光の中、その笑顔が「本史」の兆しなのだから、夜明けは近い。
●渡辺私塾会長 著述家 渡辺美術館館長 渡辺淑寛
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