給食以外では、きちんと食べられない子どもが少なくない、という報道は幾度か耳にしたことがある。飢饉に苦しむ難民キャンプではなく、日本の話だ。NPO法人栃木県こども応援なないろの理事長を務める皆川純子さんは、「次男が小学1年生の頃、クラスのお友達を5人連れてきて、5人分のおやつを出したところ、一人の女の子がそれを抱えて全部1人で食べていました。数日後、ママ友の間でその子がお友達のお家でおやつを食べ尽くすと噂になっていることを知り、こんなに近所にお家でおやつを食べられないこどもがいるという事実が衝撃的で記憶の底にありました。」と、当時を振り返る。続けて、「あの時その女の子に何もできなかった後悔から、こどもの食の支援をすると決め、なないろを設立しました」と話してくれた。
ウェブサイトには、「貧困や家庭環境により満足な生活が難しいこどもを対象とした衣食に関する支援事業を地域や関係機関と連携し継続的に,行うことで、栃木県の子育て・青少年育成に寄与することを目的とする」と、なないろのプロフィールが掲載してある。さらに、「私たちについて」というコンテンツには、「こどもへの食の支援を⽬的に2021年10⽉に発⾜し、2011年9⽉に認定を受けた特定⾮営利活動法⼈です。食の支援・学生服支援・学習支援の3つの事業をメインに幼稚園児〜大学院生までのこどもの支援を行なっております。また、地域の学生さんに活動に参加していただくことにより、近い未来にサスティナブルな価値観を持った大人を増やし、こどもに優しい地域づくりをして参ります」と明記してある。
なないろの事業は、こどもの食、こどもの学生服、こどもの学習、それぞれの支援事業の他、宇都宮おさがり交換会、ランドセル海外発送と多岐にわたる。こどもの食の支援事業では、学生を対象に学校内で朝ごはんの支援を月に3回行っており、また、無償の学習支援塾でおやつカフェ、不定期でフードパントリーを開催している。
食の支援の輪は、スタッフの努力により着実に広がっていて、現在では、コストコ壬生店、ペニーレイン、カルビー、シェレンバウムが売れ残った食品を賞味期限の内に提供している。食品ロスを少なくし、SDGsを推し進めたいとの意向も後押ししているようだ。また、宇都宮大学陽東キャンパス、作新学院大学、鬼怒中学校、星の森中学校高等学校の4校が、食品の提供を受けている。
なないろのスタッフは、提供先企業から、受け取る学校まで、食品の配送を自分たちで担っており、活動に賛同し、力になってくれる人を求めている。
先月10日、宇都宮駅ビルパセオで開催したイベントの合間に、取材に応じてくれた皆川さんは、「子どもの支援の輪を広げたいと思っているので、子どもの貧困、飢餓に市民の方ひとりひとりが目を向けていただいて、出来ることを行動していただけたらうれしいです」と現状への理解を求めた。さらに、「企業・行政・教育関係者の方へお願いがあります。私たちにご協力していただけませんか? 私たちはこどもの支援をしており、地域との連携を重視しています。こどもの支援の輪を広げるために、皆様のご協力が必要です」と力を込めた。