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コラム

2025.07.17

セツブンソウ(下)

 寄付は大成功でしたが歌は「聞いてやったら100円もらえるんけ」とか「俺が歌ってやろうか」などさんざんで、ひどい目にあいました。
 そんなある日、大田原からみえた92歳の女性が瀧廉太郎の「花」を注文してくれました。歌詞カードを渡そうとすると「全部覚えてるの、女学校で習ったから」と言って一言一句間違わずに歌いました。
 とまあ、ここまではたまにはある話かもしれません。が、私が仰天したのは帰り際に連れの娘さんが「母は認知症で昔のことは良く覚えているの、今のことは何にも分からないのよ」と言ったのです。私は彼女の人生がどんなものであったか、年老いた今どんなに大切にされて余生を送っているかが察せられ胸が一杯になりました。
 後日この話を本紙編集長にすると「彼女は歌っている間は女学生に戻って幸せだったでしょうね」と言われ、思わず涙がでました。