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コラム

2025.05.13

合同式を楽しもう

〜無限個の整数を有限個へ〜

 ドイツの大数学者カール・フリードリヒ・ガウス(1777~1855)は、1801年、「整数論の研究」(ガウス整数論)の中で、合同式の概念を初めて発表した。合同式とは、無数に有る整数を、ある整数で割った余りで分類する方法だ。例えば3で割った余りは、0と1と2だけなので、合同式では、無数の整数は、0と1と2だけで表記される。驚くべき事に、いつの間にか無限個の整数が僅か3個の整数に突如変貌したのだ。また3で割った余りで議論する時は、世界共通で、mod3で、と書けば良い。(modとは、modulusの略で、「法」の意味)だからmod3では5≡2、2+1≡0、2×2≡1のように独特な世界が広がって行く。50数年前、大学の一般教養数学で初めて合同式を知ったとき目を見開いて驚嘆した。そして数年後中学2年の数学教科書に新しく登場した時、多くの中2生は「こんなの簡単だっぺな」と言って、楽しそうに合同式をマスターしていたのを良く覚えている。現在、合同式は高1数Aで登場するのだが、「補足」となっているので、スルーする高校も有るかも知れない。

 具体的な問題に入る。「例題1」「nの3乗+5nは6の倍数であることを示せ。nは整数。」「解1、与式=nの3乗-n+6n=(n-1)n(n+1)+6nで、n-1, n、n+1の何れかは3の倍数、一つか二つは2の倍数。よって(n-1)n(n+1)は6の倍数で、与式は6の倍数の和になるので6の倍数」「解2、数学的帰納法で。略」、「解3、n=6K, 6K+1, ... 6K+5として与式に代入してひたすら計算、Kは整数。略」。
 解1は少し巧妙で、解2はやや面倒で、解3はかなり大変。いよいよ合同式の登場である。「解4、mod6で、n≡0の時、与式 ≡0、n ≡1の時、与式≡1+5≡0, n≡2の時、与式≡8+10≡18≡0, n≡3の時、与式  27+15≡42≡0, n≡ 4 の時、与式≡64+20≡84≡0, n≡5の時、与式≡125+25≡150≡0, したがって与式は6の倍数である。」小学生レベルのかけ算だけなので、一本道であり楽しく解ける。「例題1」は有名問題だが、合同式で解いている参考書は意外と少ない。

「例題2(2022年富山大、理・医・薬)「自然数nで、nの3乗+3nの2乗+2n-3は、5の倍数でないことを示せ。」「合同での略解、mod5で、n≡0の時、与式≡-3≡2, n≡1の時、与式≡1+3+2-3  3, n≡2の時、与式≡ 8+12+4-3≡21≡1, n≡3の時、与式≡57≡2、n≡4のと、与式≡117≡2. したがって与式は5の倍数はでない。」このようにルンルン気分で簡単に解ける。「5で割った余りは1か2か3であることを示せ」。と出題した方が良かったかも知れない。

「例題3(2020年茨城大、工)「22の70乗の1の位を求めよ」「略解。mod10で、22≡2より与式≡2の70乗、2の5乗=32≡2より与式≡(2の5乗)の14乗≡2の14乗≡(2の5乗)の2乗X2の4乗  ≡(2の2乗)X(2の4乗)≡ 2の6乗≡ (2の5乗)X2≡2X2≡4、従って一の位は4である。」一見煩雑に感じるが実際は指数計算のみで簡単に解いている。合同式を使わなければ(20+2)の70乗とし、2項定理を用いるのだが、少し面倒だろう。合同式は、今後、微分積分と肩を並べて高校数学のスターになる可能性を秘めていると、私は強く予感する。

 数学を学ぶ全ての高校生の皆様、ガウスが発見した合同式という「知性の森」のなかを、かつての中2生のように楽しく彷徨ってみては如何だろうか。