⑴一般相対論
前回の特殊相対論では、光速不変の原理と時間の遅れについて述べたが、一般相対論は、重力と時空の歪みと宇宙論が主である。アインシュタインは1905年に特殊相対論を発表した10年後、重力による時空の歪みを表す一般相対論を公表した。質量を持つ物体の周りでは空間が歪むという考えは、やや解りにくい。トランポリンや、厚い座布団の上に重い鉄球を置くと鉄球は深く沈むであろう。沈んだ縁にビー玉を置くと、ビー玉は鉄球の所に落ちていく。極端な例はブラックホールで、超重量星が歪んだ空間の遙か底に有って、近くを通る物質も、光までも奈落の底に落ちていく。我々凡人はそうイメージするしかない。そして何故,時空が歪むのかの定説は無く、仮説の重力子(グラビトン)も未だ未発見である。アインシュタインは、翌1916年、一般相対論を宇宙に当てはめたアインシュタイン方程式を発表した。しかしこの宇宙は定常宇宙だと確信していた彼は、この方程式の解では宇宙が収縮してしまうと解り、翌1917年、反重力(斥力)を表す宇宙項を追加した。この時期になっても、彼の一般相対論は難しすぎて低評価であったが、1919年、アーサー・エディントンが、日蝕時、太陽の近くで光が曲がる事を観察し、アインシュタインは、一躍時の人となった。しかし1929年、エドウイン・ハップルが赤方偏移を利用し、宇宙が膨張している事を証明したため、アインシュタインは、自ら宇宙項を削除した。その後ジッター宇宙モデル、フリードマンモデル、ルメートルモデルなどが提唱され、現在は、アインシュタインが削除した宇宙項が見直されて、様々な宇宙モデルが発表されている。そして宇宙が膨張していれば、膨張の始まりが有るはずだという議論になり、138億年前ビッグバンで宇宙が始まり、それ以来宇宙は膨張を続けていると言う理論が定説になった。1964年、宇宙背景放射が確認され、ビッグバン理論が定着した時、旧約聖書「創世記第Ⅰ章3に、「神は、光あれ、と言われた。すると光があった」と書かれているので、ローマ教皇庁は歓喜したと言われている。現在、宇宙膨張の原因を、反重量(斥力)を生み出すマイナス質量のダークエネルギーに求め、探求中であるが、「マイナスの質量」などSF小説並みで、UFOのような反重力飛行も夢ではなくなり興味は尽きない。
⑵量子論その2
前回、二重スリット実験で、量子は奇妙な振る舞いをすると書いた。粒子と思われていた電子は、二重スリットを通り、干渉を起こし波の性質を示す。そしてどらちのスリットを通ったのかを観察すると、干渉縞が消え、粒子の性質のみ示す。更に観察結果を知る前に観察カメラのスイッチを切ると、また干渉縞が現れる(量子消しゴム)。量子が、人間の意図を読み取るのではと、スイッチを切るかどうかは、他の偶然性に委ねても(例えば野球で巨人が勝ったらスイッチオン、負けたらオフ)、結果を人間が知ったら、粒子、知らなければ干渉縞が現れ波として振る舞う(遅延選択実験)。量子は全てお見通しなのか、謎が謎を呼び定説は無い。更に、一つの量子から、二つの量子を作り、片方のスピンが上向きであると解ると、もう一方がどれ程離れていても一瞬で下向きスピンになる。(スピンとは、自転の向き、NS極、エネルギーの偏り等で難解)これは量子もつれ(量子エンタングルメント)と呼ばれ、量子コンピューター、量子暗号通信、量子テレポーテーションへの研究が各国でなされている。
⑶結論
結論は前回と全く同じである。人間はこの宇宙を僅かしか知らない。そして戦争の存在、貧困の存在、社会に潜む暴力、差別の存在、蔓延する疾病の存在、いずれも人類の未開性に他ならない。しかし裏を返せば、人類の進化の余地は計り知れないのだ。人類にとって今までが前史で、近い将来本当の歴史(本史)が始まるのだ。相対論と量子論は、フランスの詩人アルチュール・ランボーの「地獄の季節・別れ」の一節で幕とする。(渡辺かなり改訳)まだまだ前夜だ 我等は流れ入る全ての精気と情愛をこの身に受け入れよう 暁の時、我等は燃え上がる忍耐の鎧を着て、背中から血を流し光り輝く街中を走り続けよう 次の時代、本史が見えるまで