久々に目の覚めような大外、直線一気の追い込みを見た。クラシック第1弾・桜花賞(4月9日、阪神競馬場・芝1,600m)を制したリバティアイランドの〝鬼脚〟である。
単勝1.6倍という圧倒的1番人気に支持されたリバティアイランドは、スタートで出足がつかず後方でレースを進めた。最終コーナーを回った時は後ろから2番目。内、先行有利の馬場コンディションを考えれば、この位置取りは致命的に映った。場内がざわつくなか、川田将雅騎手は冷静に馬を大外に導きゴーサイン。するとリバティアイランドは次元の違う末脚で前を行く16頭をごぼう抜き、鮮やかな差し切り勝ちを演じた。上がり3ハロン(600m)は驚異の32秒9。2014年の桜花賞で同じく川田騎手が手綱をとり、最後方から大外強襲を決めたハープスターの記録に並ぶものだった。
昨年のスターズオンアースに続き、3度目の桜花賞制覇となった川田騎手。勝利ジョッキーインタビューでは「無事に届いてくれてホッとしています。最後の直線はただ彼女を信じて乗っていました」。円熟味を増す22年最多勝ジョッキーと底知れぬポテンシャルを秘めた気まぐれお転婆娘の名コンビ。 残る牝馬2冠 (オークス・秋華賞)でも名勝負を見せてくれそうだ。
さて冒頭の句だが、18年前に廃止となった「宇都宮競馬場」最後の日を詠んだものである。かつて北関東には高崎、足利、宇都宮の3地方競馬があった。高度経済成長の頃は自治体の財政に大きく貢献したが、バブルが崩壊すると赤字に転落。長い低迷の末に足利競馬場と高崎競馬場が相次いで廃止。05年には宇都宮競馬場も約80年の歴史に幕を下ろした。
宇都宮競馬場は1周1,200m、右回りのダートコース。直線は200mと短かった。勝ち馬は逃げ・先行がほとんどで馬券的妙味はなかったが、馬との距離の近さが魅力だった。小生は中央競馬が主戦場で、地方競馬に興味はなかったが、無性に生の馬が見たくなった時は、車で20分ほどの宇都宮競馬場によく出かけた。
最後の宇都宮競馬は、3月14日に行われた。最終レースが終わると、夕焼けを背にジャンパー姿の男たちが何もしゃべらず、静かに馬場を見つめていた光景が今も脳裏に焼き付いている。
最後に田植えシーズンにちなみ農耕馬の俳句をひとつ。
「馬具耕具軒に掛け干す春夕焼」 畑中七郎