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コラム

2023.05.19

山頭馬のお馬歳時記 19
予想紙で人混みさばく六区人

 スタンドの改修工事が終わり、新装なった京都競馬場で行われた最初のGⅠ・天皇賞春(芝3200m)。ファンの関心は前哨戦を圧勝した現役屈指のステイヤー・タイトルホルダーが、どんな勝ち方を見せるかにあったといっても過言ではないだろう。しかし、最終コーナーを先頭で回ってきたタイトルホルダーは直線でズルズルと後退、ついには競争を中止してしまった。単勝1.7倍。スタンドの歓声が悲鳴に変わった。

 レースはルメール騎乗の2番人気ジャスティンパレスが勝利したが、ファンの視線は横山和騎手が懸命になだめるタイトルホルダーに注がれた。

 競馬ファンが忌み嫌う言葉,がある。レース中に脚部などに故障が発生、回復が望めないため施す安楽死処分を意味する「予後不良」である。古くからのファンならライスシャワー(1995年宝塚記念)やサイレンススズカ(1998年天皇賞秋)の悪夢が脳裏をよぎったことだろう。幸いなことにタイトルホルダーの診断は歩様に異常をきたす「右前肢跛行」。大事には至らずに済んだ。

 天皇賞ではタイトルホルダーのほかに、逃げたアフリカンゴールドが「心房細動」で競争中止、15着入線のトーセンカンビーナも左前脚を痛めたことが判明した。京都で3年ぶりに再開した天皇賞で、3頭の馬に故障が発生。稍重の馬場に逃げ・先行馬が引っ張るレース展開、そして京都特有の〝魔の下り坂〟。様々な要因が重なったとはいえ、スピード優先の固い馬場設計は、競馬の基本である〝馬ファースト〟を考えるなら早急に見直すべきだろう。脚への負担を軽くするため芝の深い欧州の競馬場。このままでは、悲願の凱旋門賞制覇など夢のまた夢である。

 さて5月も早や終盤。21日にオークス、28日には日本ダービーとクラシックレースが佳境を迎える。学生時代はこの季節、毎週のように浅草の場外馬券場に通った。新仲見世通りを抜けると漂ってくるもつ煮と焼き鳥の匂い。その先にあるビルが浅草場外である。冒頭の句はごった返す六区の通りを職人風のお兄さんが、「ごめんよ、ごめんよ」と言いながら競馬専門紙を顔の前で振りながら進んでいく姿を詠んだものだ。「さすが浅草、ギャンブラーも粋だね~」と田舎者の小生、深く感じいった次第である。

 最後に微笑ましい春の俳句を。

「澄んだ眼で 菫を喰べてしまう馬」 田川飛旅子